「歯石取り、1回で終わらないの?」
歯科衛生士なら1回は患者さんからこのような相談を受けたことがあると思います。
私たちもいつもジレンマを抱えています。
歯石取りはエステ感覚で歯の表面をツルツルにしたり、審美的にきれいにしたりするために行っている
処置ではありません。
歯石取りの目的は、歯周病の治療と予防です。
そのため、初回からすぐに歯石取りを行うのではなく、まずはレントゲンや口腔内写真、歯周ポケット
検査が必要です。
体に異常が出て病院に行った場合、検査を受けたうえで診査診断・治療計画の立案を行い、治療開始と
いった流れになると思います。
歯科医院での歯周病治療も同じです。
まずは必要な検査を行い、現状を把握する必要があります。
歯石は歯ぐきの上の見えるところに沈着する歯肉縁上歯石と、歯ぐきの中(歯周ポケット)に沈着する歯
肉縁下歯石があります。
歯肉縁下歯石は歯周ポケットの奥深くにあり、非常に硬いため、1回で簡単に除去することはできません。
たとえ定期的に歯石取りを受けていたとしても、SRP(歯肉縁下歯石の除去)を受けたことがない場合や、
1年以上放置されている場合は、1回で歯石を取りきるのは物理的に不可能です。
さらに、歯列不正や喫煙、歯石の量などによってもSRPの回数は変わってきます。
また、歯科医院で時間をかけて歯石取りを受けても、残念ながら新しい歯石が付いてきます。
速い方であれば2週間程度で沈着します。
歯石取りに通っている間に、新たな歯石が付いてくるということになります。
そうならないために重要なのが患者さん自身のブラッシングです。
ブラッシングは、歯周病治療の成功に大きく関係しています。
そのため、当院では歯石取りだけでなく、歯石を付きにくくするために歯磨きトレーニングに力を入れ
ています。
「歯磨きなんて毎日してる。」
「フロスや歯間ブラシもしてる。」
「今さら何を練習するの?」と思われるかもしれませんが、『している』と『できている』は全く違う
のです。
今までのやり方で歯石が溜まったり、歯周病になったりしているということは、やり方を見直す必要が
あるのです。
患者さん自身のブラッシングも歯周病治療のひとつです。
歯周病治療は簡単ではありません。
患者さんにも歯周病治療に参加していただかなければ成功できません。
時間がない、お金をかけたくない方こそ、まずは一度歯周病治療を受けてきちんと歯周病をコントロー
ルしましょう。
そうすれば、あとは3か月に1回の定期検診で済みます。
歯周病が悪化すれば時間やお金を失うだけでなく、将来の健康まで失ってしまうことになります。
歯周病は口の中だけの病気ではなく、全身の病気とも深い関わりがあるのです。
また、健康なお口は人生を豊かにします。
人前で口元を気にせず笑ったり、外で好きな物をなんでも食べたり。
私たちは歯のお掃除係ではありません。
患者さんに健康になっていただくためのお手伝いをして、患者さんの人生に寄り添いたいのです。
何十年先の自分のために歯周病治療と歯のメインテナンスをしませんか。
いつでもおまちしています。
庄野